メモ: The Velocity of Censorship: High-Fidelity Detection of Microblog Post Deletions

USENIX Security 2013の論文メモ2つ目

The Velocity of Censorship: High-Fidelity Detection of Microblog Post Deletions

Tao Zhu, Independent Researcher; David Phipps, Bowdoin College; Adam Pridgen, Rice University; Jedidiah R. Crandall, University of New Mexico; Dan S. Wallach, Rice University

第一著者の方は中国人のようなのだが、こんな論文を書いて中国に戻ったら当局に捕まるとか消されたりしないんだろうかというドキドキが止まらない論文。Independent Researcherというのが、またいろいろと妄想をかきたてる。

一部界隈では有名な話だが、中国のインターネットは言論統制や不穏分子発見のためとても厳しいネットワーク上の活動監視やデータ送受信のブロックが実施されている。そのため、海外のSNSではなく中国国内のSNSを使う人が多いそうだが、そこはさすが中国というべきか、多くのサービスが表向き普通に運営しているものの、当局の監視が厳しく行われている。そのなかの中国国産Micro blog(≒Twitter)であるWeibo(読み:ウェイボー)をとりあげ、どのような取り締まりが実施されているのかについて分析したのが本発表である。

筆者らはユーザ視点で当局がどのような活動をしているかを推定している。基本的な戦略は以下のとおり。

  1. 当局に目をつけられそうな人たち(sensitive user group)を見つける
  2. 彼らの投稿を監視する
  3. 彼らの投稿の削除を発見する

「削除するくらいなら、そもそも投稿させないのでは?」と思ったが、これはWeiboの挙動を見る限りデータそのものが消え去っている通常の削除と、Permission Deniedによって「見えなく」なっている削除の2通りがあるらしい。これは監視の目的からすると「きわどい発言」をしたデータというのを残しておいて、あとから検証や捜査につかうという可能性があるのではないかと考えられる。(このあたりは推測しかできないので、筆者も厳密には言及していない)またあとから削除するというのも、すぐにはNGキーワードだということが分からずあとから発覚して消すなど、いろいろな状況が予想される。筆者らの観測によると10%ほどの書き込みは1日以上たったあとに削除されていたらしい。したがって、筆者らは単純なキーワードマッチ以外に、怪しい人物を事前に特定してその人物らの投稿を注意深く監視したり、削除対象となる投稿を見つけた場合に関連する他の投稿を探しだして詳しく検査したり、人気のトピックを注意深く監視するなど、まさにあの手この手で対応しているのではないかという仮説を主張している。

この論文、Weiboに特化した話なので、おそらく一般性・普遍性についてそこまで優れているというわけではないとみられる。しかし近年、日本を含む中国以外の国でも政府・公安機関による監視を強化する流れが顕著になってきているため、(良くも悪くも)先進的な事例になっている中国で、政府による介入がどのように実施されるかという観測や考察については多くの人に対して価値があると判断されたのではないかと思う。理論より実践よりなUSENIXらしいなぁ、という印象。

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